このゲームでは、「し」を「shi」「si」「ci」の三通りで打てるようにしています。どれか一つを特別な入力として追加したわけではありません。三つとも日本語入力で「し」を打つために使えるので、ゲームでも三つとも使えるようにしました。「shi」ならs、h、iと押します。「si」はs、iで、「ci」はc、iです。キーの並びは違っても、入力される日本語は全て「し」になります。日本語では同じ文字を入力できるのに、ゲームを開いた時だけ一つが正解で、残りが間違いになる。それは逆におかしいと考えました。

タイピングゲームを作る以上、どのキーを正解として受け付けるかはゲーム側で決めることになります。「し」の正解を「shi」だけに絞ることもできますし、「si」だけにすることもできます。ただ、一つに決められることと、一つに決める必要があることは同じではありません。日本語入力で使えるキーの並びが複数あるなら、わざわざゲーム側で狭くする必要はないはずです。今回は、日本語で入力できる範囲をそのまま受け付ける形にしました。ここで言う日本人向けは、日本人全員が三通りを同じように使うという意味ではありません。三通りとも日本語を入力する方法として成立しているので、どれを使う人でもゲーム側で止めないという意味です。

ここには、大手のタイピングゲームと合わせる必要もありました。大手のゲームで受け付けられている打ち方を、このゲームでも同じように受け付けます。大手では正解になる「し」の打ち方が、こちらでは不正解になると、同じ文字を打っているのに判定だけが変わります。その差をこのゲーム独自の決まりとして残す必要はないと判断しました。「shi」は合わせるけれど、「si」と「ci」は外すという形では不十分です。合わせる対象には、受け付けられる入力の範囲も含めました。「し」を打てるという結果が同じでも、そこへ使えるキーが違えば、入力の仕様まで同じとは言えません。受け付けるキーの並びまで含めて合わせています。大手に合わせるというと、単に他のゲームの仕様をコピーしたようにも聞こえます。自分の中では、大手が採用しているからという話だけで終わっていません。日本語そのものが「shi」「si」「ci」の入力を受け付けることが前提にあります。大手のタイピングゲームに揃えることと、日本語として可能な入力をゲームでも可能にすることが、同じ所へ繋がっていました。

もし日本語入力では「shi」しか使えないのであれば、ゲームも「shi」だけを受け付ければ話は単純です。実際には「si」でも「ci」でも「し」を入力できます。それを知った上で一つだけに限定すると、プレイヤーは日本語として間違っていない入力をゲームの中でだけ直すことになります。ゲーム独自の打ち方に合わせてもらうより、日本語で使える打ち方にゲームを合わせました。「shi」だけを選べば、「si」と「ci」を使えない理由が残ります。「si」だけを選んでも、今度は「shi」と「ci」を外す理由が必要です。「ci」だけでも同じです。どれかを一つ選び直しても、日本語では可能な入力をゲームが拒否する問題は消えません。三つとも受け付けることで、初めて同じ基準で扱えます。

「ci」まで使えることにしたのは、外国人向けに選択肢を増やしたかったからではありません。このゲームのターゲットは日本人です。アルファベットを使っているのでローマ字の表記についての話に見えますが、ここで扱っているのは日本語をキーボードで入力する時の操作です。外国人が日本語をどう打つかを基準に広げた仕様ではなく、日本人が使う日本語入力に合わせています。今回の入力候補は、外国人向けのローマ字表記から選んだものではありません。日本語入力で「し」を打てることを基準に受け付けています。日本人向けに最適化する以上、基準に置いたのは日本語として何が入力できるかです。「し」には三つの入力が使えるので、三つともゲームで使える状態にしています。一つの綴りへ揃えてもらう形にはしませんでした。「shi」「si」「ci」のうち、どれが一番正しいかをゲームの中で決めたいわけではありません。どれを入力しても「し」になるという、日本語入力に元からある幅を受け付けたいだけです。どの打ち方を選んでも、そのまま使えます。「shi」を選ぶなら「shi」、「si」を選ぶなら「si」、「ci」を選ぶなら「ci」のままです。別の打ち方へ揃えることは求めません。

「このゲームでは『し』は『shi』です」と一つに決めること自体はできます。けれど、日本語では「si」と「ci」も「し」の入力に使えます。それらをゲームで使えないとする決まりは、日本語として可能な入力と食い違います。入力結果が同じ「し」なら、ゲームでも同じ正解として扱う。ゲーム用の例外を増やしたのではありません。日本語側に元からある入力を、そのまま正解として残しました。